3 発生時の対応(障害別事項)
(1) 身体障害がある人の支援
(1) 肢体不自由な人の支援
家での対応
 自力で移動が困難な人は、頭を覆うようにして、できる限り出入り口に近く、家具類が転倒、落下する恐れのない安全な場所へ移動させます。
 火災の発生に気づいたら、自力で移動が困難な人に知らせ、ガラス類の破片や物の落下などに注意しながら、できる限り低い姿勢をとらせて、煙に巻かれないようにおぶったり、担架に乗せるなどにより外に脱出させします。
 脱出後は、できる限り安全な場所に待避させた後、隣近所に知らせ、互いに協力しながら初期消火と119番通報をします。
外出中の対応
 肢体不自由な人を見かけたら、声をかけ、必要な援助を行ったり、必要な場合は安全な場所へ誘導します。
 移動が危険な状況のときは、最寄りの防災機関などに保護を申し出るよう伝え、依頼があれば誘導します。

(2) 視覚障害がある人の支援
家での対応
 すばやく机の下などにもぐるか、座布団などで頭を守るよう指示します。
 家の中などの状況を伝え、家具の転倒、落下物、ガラス類の破片に注意しながら、家の中の安全な場所へ誘導します。
外出中の対応
 障害のある人を見かけたら、声をかけ、まわりの状況を伝え、安全な場所へ誘導します。

*誘導する際の留意点
 自分の肘の上を視覚障害のある人に片手でつかんでもらい、歩行速度に気をつけて歩きます。決して後ろから押したり、手を引っ張たり、肩や白杖をつかんだりしないようにします。

(3) 聴覚障害がある人の支援
 手話、メモや緊急会話カード、身振りなどで知らせ、机の下にもぐるか、座布団などで頭を守るよう指示します。
 火災の発生に気づいたら、障害のある人に手話、メモや緊急会話カード、身振などで知らせ、協力して初期消火と「119番通報」をします。
 初期消火が困難な時は、ガラス類の破片の音や物の落下音などに注意しながら、身を低くし、煙に巻かれないように脱出するよう手話やメモなどで指示します。
外出中の対応
 障害のある人から依頼があれば、メモなどで情報提供や援助をします。

(4) 音声言語機能障害がある人の支援
家での対応
 火災の発生に気づいたら、障害のある人に知らせ、協力して初期消火と119番 通報をします。(緊急フアックスも使用するようにします。)
外出中の対応
 障害のある人から依頼があれば、ていねいに聞き取るようにし、必要な情報提供や援助をします。聞き取りが困難な時は、相手に断って筆談やメモを使用するようします。

(5) 内部障害等がある人の支援
家での対応
 かかりつけの医療機関に連絡して、状況を把握し、以後の対処の指示を受けたり、連絡してもらうようにします。
外出中の対応
 障害のある人から依頼があれば、医療機関に連絡し、以後の対処について指示を受けます。

*盲導犬、聴導犬、介助犬使用者の留意点
 建物の倒壊や落下物により、道路の歩行が困難な場合、給付先の団体などに、一時、盲導犬、聴導犬、介助犬を預けるように指示します。

(2) 知的障害がある人の支援
家での対応
 机の下などにもぐったり、頭を守る指示が理解できないようならば、手を引いて誘導したり、頭を覆うようにします。
 緊急連絡カード、笛やブザーを携帯するよう言います。氏名や連絡先を書いた名札などを縫いつけた衣服があれば、着替えさせておきます。
 日頃から服用している薬があれば、携帯するようにします。
外出中の対応
 状況を簡潔に説明して障害のある人を安心させ、必要な行動をとります。
その他
 事前に決められたことを守り、支援者に従うように強く指示します。
 努めて冷静な態度で行動し、絶えずやさしい言葉をかけるようにします。
 話をする場合は、一度に多くの内容を盛り込まず、ひとつのことを簡潔に伝えるようにします。この場合、言葉だけでなく文字や絵を利用します。
 必ず誰かが付き添い、一人にしないようにします。移動する場合は、手をひくなどします。
 災害時の不安から大声や異常な行動が出ても、大騒ぎしたり、叱ったりしないようにします。強い不安や発作(パニック)がある場合は、速やかに主治医に連絡し指示を受けます。もし、連絡がとれない場合は、最寄りの医療機関または消防署へ相談します。

(3) 精神障害がある人の支援
家での対応
 机の下などにもぐったり、頭を守る指示が理解できないようならば、手を引いて誘導したり、頭を覆うようにします。
 緊急連絡カードや精神保健福祉手帳を携帯するよう言います。
 非常持出袋を確認するとともに、ラジオやテレビなどから正しい情報を得て、冷静さを保つよう声をかけるなどします。
 日頃から服用している薬があれば携帯するようにします。
 かかりつけの医療機関に連絡して、状況を把握し、以後の対処の指示を受けたり、連絡してもらうようにします。
外出中の対応
 障害のある人から依頼があれば、最寄りの医療機関を教えたり、連絡をとるようにします。
 医療機関からの指示に従い、以後の対処に協力します。
その他
 努めて冷静な態度で行動し、状況を簡潔に説明して障害のある人を安心させ、必要な行動をとります。
 話をする場合は、一度に多くの内容を盛り込まず、ひとつのことを簡潔に伝える ようにします。この場合、言葉だけでなく文字を利用します。
 必ず誰かが付き添い、一人にしないようにします。移動する場合は、手をひくなどします。
 災害時の不安から大声や異常な行動が出ても、大騒ぎしたり、叱ったりしないようにします。また、妄想や幻覚の訴えがある場合も、強く否定したりせず、相槌をうつ程度にとどめます。
 強い不安や症状悪化がみられる場合は、速やかに主治医に連絡し指示を受けます。もし、連絡がとれない場合は、最寄りの保健機関や医療機関、または消防署へ相談します。

(4) 支援が必要な高齢者の対応
(1) 寝たきりや身体虚弱な高齢者
 毛布でくるんだり、防災ずきんなどで頭を覆うなど安全確保を図り、おぶいひもでおぶったり、複数で抱えたり、車イスや担架を使うなど、高齢者の状態に応じた適切な方法で介助して、安全な場所へ避難させます。
 日頃から服用している薬があれば携帯するようにします。
 家族などで避難させるのが困難なときは、隣近所など周囲の人に協力を求めます。
(2) 痴呆性高齢者
 努めて冷静な態度で高齢者に接し、行動します。
 大きな声で、机の下などにもぐったり、転倒しやすい家具から離れたり、頭を守るよう指示し、手を引いて誘導します。
 必ず誰かが付き添い、一人にしないようにします。また、状況を簡潔に説明して高齢者を安心させ、落ち着かせるようにします。
 災害時の不安から大声や異常な行動が出ても、大騒ぎしたり、叱ったりしないようにします。
 激しい興奮状態が続くときは、家族が必ず付き添って他の人から離れたところで様子を見るようにします。

*寝たきりや身体的に虚弱、痴呆性疾患などの理由により、自力での避難や必要な情報を的確に把握し行動することが困難な高齢者には、支援を必要とすることが多いと考えられますが、支援の内容は高齢者の状態によって様々です。
 このため、災害発生時には、上記のほか、それぞれの状態に応じて、前記の(障害別事項)の該当項目を参照し、適切な支援に努めます。