第1章 障害の知識
(1)  身体障害
 身体障害は、永続する目、耳、手足、内臓などの身体機能の一定程度以上の障害をいい、長期にわたり日常生活または社会生活に相当な制限が生じます。
 身体障害者福祉法に定められている障害は次のとおりで、障害のある人(15歳未満の場合は保護者)の申請によりそれぞれ一定の障害があった場合は、身体障害者手帳が交付されます。

(1) 肢体不自由
 脊髄や頸椎の損傷、筋骨系の異常、欠損や切断、脳血管障害などにより四肢(手足)の運動機能や立つ座るなど体位の維持に障害のある状態です。
脊髄や頸椎の損傷などによる体幹(頸部、胸部、腹部、腰部)の機能障害では、発汗、体温調節、排尿・排便などの自律神経の障害を伴うことが多くあります。
乳幼児期以前の脳性まひなどによる脳の運動制御機能の障害(脳原性運動機能障害)、脳出血や脳梗塞などの疾病では、自力での移動困難に加え不随意運動(自分の意思によらない運動)のため手足が思い通り動かせなかったり、筋肉の緊張により動作がぎこちなかったり、緩慢だったり、まひしているものがあります。

(2) 視覚障害
 視力や視野に障害のある状態です。
 視力の障害では、光覚(光を感じる感覚)もない全盲から補助具の使用により拡大文字が識別できるものまであります。
    全盲の場合などは点字を使用しますが、点字の読み書きができない方もあり、音声でのコミュニケーションも必要です。
視野の障害では、両眼の視野がそれぞれ10度以内と極めて狭くなるものや、周辺 だけ見えるもの、左右いずれも半分しか見えないものなど様々です。
視力や視野の障害により、白杖(視覚障害者が歩行時に使用する杖)や盲導犬の補助があっても、慣れない環境では周囲の状況が得にくいため、単独での移動には 困難が生じます。

(3) 聴覚障害
 音が聞こえなかったり、聴力(聞く力)が不十分な状態です。
完全に聴力がないものから補聴器の使用により近くの音の聞き取りが可能なものまであります。幼少時期より前から障害がある場合、音声や言語の機能に障害がなくても言葉の聞き取りが困難なため、話すことに支障が生じることが多くあります。
この場合、手話(手の動きにより表現する目で見る言語)や口話(読唇法)、筆談などを総合的に使ってコミュニケーションを図る必要が生じます。

(4) 内部障害
 心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸、免疫機能に障害のある状態です。
心臓の障害では、一定以上の身体活動により心臓に負荷がかかると倦怠感、呼吸困難、手足のむくみ、狭心症の発作(胸の圧迫感や胸痛)などの症状が起こります。
じん臓の障害では、体内の水分や塩分の調節、老廃物の排泄、血圧などの調節が困難なため、水分や塩分摂取の調整、食事療法、身体活動の制限が必要で、大多数の方が定期的に人工透析が必要です。
 呼吸器の障害では、気管や肺の疾病などによりガス交換が十分に行われず、呼吸困難が生じるため、活動が制限され、呼吸を助けるために酸素療法が必要なものもあります。風邪などの感染症は、急速に呼吸機能を悪化させるため、十分な注意が必要です。
ぼうこうと直腸の障害では、自分の意志で尿や便の排泄がコントロールできない ため、自分で管を使用して尿を体外へ排泄することや、身体に造設されたストマ(人工的な排泄器官)からの定期的な排泄処理が必要で、活動が制限されます。
小腸の障害では、通常の食事では栄養が不足するため、静脈注入による栄養補充が必要です。携帯型輸液システムの使用によりある程度生活の支障は軽減できます。
免疫機能の障害は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染により免疫をつくる 機能が低下するため、通常は発症に至らない細菌やウイルス、カビなどが体内に侵入した場合でも増殖を止められないため、重い肺炎やがんなどにかかり生命を失う危険があります。治療の段階や合併症の有無などにより、活動制限も異なります。
このウイルスの感染力は極めて弱く、日常的な接触や空気では感染しません。

(5) その他の障害
平衡機能障害
 三半規管などによる平衡機能や中枢神経系の働きによる姿勢や動きを調整する機能に障害がある状態です。このため、四肢体幹に異常がなくても、転倒したり、著しくよろめくなどの歩行障害が生じます。
音声・言語機能またはそしゃく機能障害
 発声できない状態や発声しても言語にならなかったり、理解しがたいなど意思疎通が困難な状態です。気管切開や喉頭摘出をした場合は、口や鼻を通さず気管孔から空気を取り入れるため、においをかぐことができません。
そしゃく機能障害は、ものを飲み込めなかったり、かみくだけない状態のため、 チューブにより食物を直接に胃に流し込まねばならなかったり、歯科矯正が必要 となります。

(2)  知的障害
 知的障害は、先天的な様々な原因または出生後の比較的早い時期における脳の障害により、知的能力の全般的発達が不完全であったり、不十分な状態にあるため、学習、日常生活の維持、社会生活への適応などが著しく困難となる障害です。
 障害の状態は、発達が全般的に比較的均一に遅れているものから、一部が不均衡に遅れているものなど様々です。
 障害の程度は、一人では日常生活の維持(衣、食、排泄など)ができず、意思疎通も困難なため、常に介助や保護が必要なものから、言語能力や理解力など一部の発達は遅れているが他は問題がなく一人で社会生活も可能なものまであります。
 知的障害のある人または保護者の申請により、一定程度の障害があった場合は、療育手帳が交付されます。

(3)  精神障害
 精神障害は、精神的な疾患、各種精神疾患により、精神の機能に支障があったり、不十分な状態にあるため、日常生活の維持、社会生活への適応などが著しく困難と なる障害です。障害の状態は、原因となる精神的な疾患などにより様々です。
 障害の程度は、一人では適切な日常生活の維持(衣、食、排泄など)ができず、適切な意思伝達も困難なため、常に援助が必要なものから、通院や服薬により僅か な援助で問題なく一人で社会生活も可能なものまであります。
 精神障害のある人の申請により、一定程度の障害があった場合は、精神障害者保健福祉手帳が交付されます。