第2章 災害の予防
3 事前対策(障害別事項)  
(1) 身体障害がある人の対策
(1)肢体不自由な人の対策
 安全な居住空間を確認しておきます。(常に整理整頓を心がけ、あまり物を置かない)
 居住スペースは、できるだけ避難のしやすい1階を選びます。
 歩行補助具は倒壊した家具の下敷きにならないように、常に安全な一定の位置に置き、暗闇になっても分かるようにしておきます。
 家族など、日頃、介助している人が外出している時の災害発生に備え、隣近所などに万一の際の協力や介助を依頼しておきます。
 非常用持出品として紙おむつ、携帯用トイレ、ビニールシート(おむつ交換時や着替えに必要)を用意します。

《車いす使用者》
 車いすが通れる幅を常に確保しておきます。
 車いすが使用不能になった時のために、それに代わる杖、おぶいひもなどを用意しておきます。
 車いすのタイヤの空気圧は定期的に点検します。
 雨天や寒冷時に備え、車いすでも使用可能なカッパ等を用意します。

《電動車いす使用者》
 電動車いすのバッテリーは、使用後必ず充電し、室温で保管します。
 補液タイプのバッテリーは、定期的に液量をチェックします。
 車いすに内蔵されていない充電器は、倒壊した家具の下敷きにならないように安全な場所に置きます。

(2)視覚障害がある人の対策
 家の中の物の配置を常に一定にします。家族が配置を変更したときは、すぐに確認しておきます。特に、非常用持出袋などは必ず確認しておきます。
 災害時の避難通路(コース)の設定とその通路の安全を確認しておきます。
 居間、寝室などの家の中や玄関付近の整理整頓を心がけます。
 メガネ、白杖(折りたたみ式)、点字板、音声時計や触知式時計を非常用持出袋に入れておきます。
 糖尿病、緑内障のある人は常備薬を常に持ち出しが出来るようにしておきます。
 メガネ、白杖、点字板等が地震で損害を受けたり、なくならないよう、いつも身近で安全な一定の場所に置きます。
 ガラスなどが飛散して床が危険になるので、各室にスリッパなどを用意します。
 緊急時の連絡先点字メモ、メモ用録音機等、自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。
 情報入手手段としてラジオがすぐに利用できるようにしておくか、カード式携帯ラジオを常に身につけます。予備の電池を十分に備えておきます。
 家族が外出し、ひとりの場合、隣近所に万一の際の協力を依頼しておきます。

(3)聴覚障害がある人の対策
 補聴器は常に手元に置きます。
 補聴器等及び専用電池は、予備を用意し、非常用持出袋に入れておきます。
 正確な情報を収集するために、緊急連絡先表、携帯電話やPHSなど文字情報が得られる携帯端末、筆談に必要なメモ、携帯用ホワイトボード、筆記用具などを常に身につけます。
 防災関係機関からの緊急通報用に有効なため、ファックスを設置するとともにロール紙の予備を用意しておきます。
 ファックスを設置していない方はファックスを持っている人、ファックスのある店をあらかじめ確認しておきます。
 災害時に必要な緊急会話カード(依頼カード、連絡カード)を用意し、常に持参します。
 家族が外出し、ひとりの場合、隣近所に万一の際の協力を依頼しておきます。
 夜間の睡眠中の情報伝達をどうするか家族や隣近所の人達と決めておきます。

 *携帯電話、PHS、ポケベル、インターネット・パソコン通信など文字情報でお互いに情報のや りとりができる機器があり、携帯電話、PHS、ポケベルなどは着信が振動でわかりますので、た いへん便利です。

(4)音声言語機能又はそしゃく機能に障害がある人の対策
 携帯用会話補助装置を使用している人はバッテリーの予備を非常用持出袋に入れておきます。
 栄養チューブセットなど、食事のための器具(予備)を非常用持出袋に入れておきます。(そしゃく機能障害者)
 笛やブザー等、自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。
 筆談に必要なメモや携帯用ホワイトボード、筆記用具を備えておきます。
 (雨天時に使用可能で、何度も繰り返し使用できるものが望ましい。)

(5)内部障害や難病がある人の対策
 日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常用持出袋に入れておきます。
 特殊な治療食の備えについては、かかりつけの医療機関に相談しておきます。
 家族にも、医療機関からの指示や緊急時の対処法等をよく説明し、理解しておいてもらいます。

《心臓機能障害》
 ペースメーカーを装着している方は、機器が故障した時の対応、緊急時の連絡方法などを、かかりつけの医療機関や機器メーカーに相談しておきます。

《じん臓機能障害》
 通院による透析ができなくなった時に備え、県外の医療機関での透析など、日頃から関係団体や医療機関と災害時の対策を具体的に話し合っておきます。
 かかりつけ以外の医療機関で透析を受ける場合に備えて、自分のドライウェイトやダイアライザーのタイプなどの透析条件を緊急連絡カードに記入し、非常用持出袋に入れておきます
 災害時には食事、水、薬の自己管理が重要です。食事と水分を上手にコントロールしておくことで、数日間は生活を続けられます。
 (1日の生活において、カロリーは体重1kg当たり30キロカロリー、蛋白質は体重1kg当たり1.2グ ラム、塩分は3グラムに抑えるようにします。)
 カリウム対策のため、カリメイトやケーキサレイトの予備を持っておきます。
 自己連続携帯式腹膜灌流法(CAPD)による透析療法をしている方は透析液加温器のバッテリーの予備を非常用持出品と同じ場所に常においておきます。
 また、透析液パックを非常用持出品と同じ場所に常においておきます。

《呼吸器機能障害》
 在宅酸素療法をされている方は、あらかじめ、かかりつけの医療機関に酸素の必要度(酸素を使用しなくても大丈夫な日数)などを確認しておくと安心です。
 濃縮酸素の濃縮器や液体酸素のボンベは、火気から離れた場所に保管します。
 酸素チューブの配管は、地震が起きたときに、体にからまないように工夫して配管してもらいます。
 人口呼吸器を装着している方は、ライフライン(電気、ガス、水道などの生活に必要な設備)が寸断された場合に備えて、アンビューバック(蘇生器の一つで、自分で呼吸のできなくなった人に人工呼吸を行うためのゴム製の袋)、バッテリー、手動式吸引機などを用意しておきます。
 携帯用酸素ボトルを、非常用持出袋に入れておきます。
 吸入加湿処理により、呼吸に伴う負担の軽減を図るため、ネブライザーを使用する方はバッテリーの予備を非常用持出袋に入れておきます。

《ぼうこう又は直腸機能障害》
 ストマ装具(最低10日分)、洗腸セット(水、ぬれティッシュペーパー、輪ゴム、ビニール袋、はさみ)を非常用持出袋に入れておきます。
 ストマ装具のメーカー、販売店の連絡先を緊急連絡カードに記入して、非常用持出袋に入れておきます。(家族にも同様の連絡先を知らせておきます。)
 また、処理方法を家族にも教えておきます。

《盲導犬、聴導犬、介助犬の使用者》
 在宅酸素療法をされている方は、あらかじめ、かかりつけの医療機関に酸素の必要度(酸素を使用しなくても大丈夫な日数)などを確認しておくと安心です。
 濃縮酸素の濃縮器や液体酸素のボンベは、火気から離れた場所に保管します。
 酸素チューブの配管は、地震が起きたときに、体にからまないように工夫して配管してもらいます。
 人口呼吸器を装着している方は、ライフライン(電気、ガス、水道などの生活に必要な設備)が寸断された場合に備えて、アンビューバック(蘇生器の一つで、自分で呼吸のできなくなった人に人工呼吸を行うためのゴム製の袋)、バッテリー、手動式吸引機などを用意しておきます。
 携帯用酸素ボトルを、非常用持出袋に入れておきます。
 吸入加湿処理により、呼吸に伴う負担の軽減を図るため、ネブライザーを使用する方はバッテリーの予備を非常用持出袋に入れておきます。

《ぼうこう又は直腸機能障害》
 ストマ装具(最低10日分)、洗腸セット(水、ぬれティッシュペーパー、輪ゴム、ビニール袋、はさみ)を非常用持出袋に入れておきます。
 ストマ装具のメーカー、販売店の連絡先を緊急連絡カードに記入して、非常用持出袋に入れておきます。(家族にも同様の連絡先を知らせておきます。)
 また、処理方法を家族にも教えておきます。

《盲導犬、聴導犬、介助犬の使用者》
 ドッグフードは必ず1袋(箱)多めに買い置きをします。
 フィラリア症予防薬は冷暗所などに保管しておきます。
 かかりつけ以外の動物病院や各盲導犬協会の連絡先を把握しておきます。

(2) 知的障害がある人の対策
 日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常用持出袋に入れておきます。
 服用する際、たとえばオブラートを使用するなどの独自の方法を用いる薬の場合、その旨を緊急連絡カードに記載しておきます。
 笛やブザーなど自分が助けを求めたり、安全を確保するために必要な物を身につけます。
 身の回り品や食べ物に、特別なこだわりを持っている場合は、そのことを周囲の人たちに理解してもらいます。
 災害時に支援が必要なことを書いた緊急連絡カードや身元、連絡先などが確認できる名札等を、常に携帯するか、衣服等に縫いつけておきます。
 実際に行ったみるなどにより避難場所を憶えておくよう心掛けます。

(3) 精神障害がある人の対策
 日頃から服用している薬の処方箋の明細や薬局からの投薬説明文をコピーして、非常用持出袋に入れておきます。
 家族にも、医療機関からの指示や緊急時の対処法等をよく理解しておいてもらいます。

(4) 支援が必要な高齢者の対策
 安全な居住空間を確保しておきます。(常に整理整頓を心がけ、あまり物を置かない。寝るときは、家具やガラス窓からできるだけ離れる。)
 居住スペースは、できるだけ避難のしやすい1階を選びます。
 杖などは倒壊した家具の下敷きにならないように、常に安全な一定の位置に置き、暗闇になっても分かるようにしておきます。
 家族など、日頃、介助している人が外出している時の災害発生に備え、隣近所などに万一の際の協力や介助を依頼しておきます。
 非常用持出品として、おぶいひもや毛布、車イス、紙おむつなどを用意します。

 *移動困難や身体的に虚弱などの理由により、自力での避難や必要な情報を的確に把握し行動することが困難な高齢者が事前対策を考えるにあたっては、上記のほか、それぞれの状態に応じて、前記の(障害別事項)の該当項目を参照し、適切な対策に努めます。