第2章 災害の予防
2 事前対策(共通事項)  
(1) 事前対策の意味
 災害が発生してからでは防災対策は間に合いません。全ての防災対策は事前に行わなければなりません。その中には自分でやらなければならないこと、例えば、家を安全空間にすることや非常用品の備蓄、非常用持ち出し袋の準備等があります。
 また、他の人や関係機関の協力をあおいだり、ネットワーク作りのように地域や友人、団体やグループとの連携を必要とするものもあります。
 大切な自分や家族の生命や生活を守るために、十分な事前準備をして災害を迎え撃 つ強い心構えが大切です。

(2) 緊急連絡カードをつくる
 災害発生時に自分が望む援助や必要とする支援等をあらかじめまとめて、オリジナルの緊急連絡カードなどを作成しておきます。自分がどういう支援を必要としているかを周囲の人に伝えたり、日頃から知ってもらううえで大変役立ちます。また、周囲の人たちも何をしてほしいのかを明確に把握することができます。
〈記載する項目例〉
住所、氏名、生年月日、血液型、障害の種類・程度、身体障害者手帳などの番号、
緊急時の連絡先(自宅、家族、親戚、医療機関など)、服用している薬の種類、
必要とする支援の内容、その他気をつけなければならない心身の状況
〈具体的使用例〉
 厚紙に貼ったりパスケースに入れて、携帯できるようにする。
 支援を必要とする時にいつでも渡せるように、何枚かコピーして、用意しておく。
 掲示できるよう、大きくコピーし、厚紙等で補強して非常用持出袋に入れておく。

(3) 非常用持出品を準備する
 日頃から避難するときに備えて、非常持出品をリュックサックなどにひとまとめに して用意しておきます。非常持出品は、出入口近くの取出しやすい場所に備えておき、家族みんなが知っておくようにします。
 また、緊急時に、すぐに取り出したり、持てるように、置き場所は、常に同じところにしておき、どうしても配置を替える場合は、家族などみんなで確認します。
*非常用持出品の主な例
 飲料水、食糧(乾パンなど)、携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池(予備)、衣類(下着など)、タオル、雨具、マッチ、ロウソク類、薬(薬袋に入れて)、救急用品セット、貴重品(現金など)、携帯用ブザーや笛、防災ずきんやヘルメット
(4) 災害に備え備蓄する 
飲料水
 飲料水は、1人1日3リットルが最低の目安。最低2日分程度をペットボトルなどの容器に常時用意しておき、定期的に取り替えます。
食糧の備え
 乾パン、缶入りごはん、レトルト食品、フリーズドライ食品などを最低2日分程度を備え、定期的に取り替えるようにします。
消火器類と消火用水の備え
消火器類は、火気を使うところへ取り出しやすいように置いておきます。
消火器は、日頃、防災訓練に参加するなどして操作方法を理解しておきます。
消火用水は三角バケツや浴そう、洗濯機などに備えておきます。いざというときには水洗トイレなどの生活用水としても活用できます。
*操作が簡単なスプレー式消火器もありますので、粉末型消火器とともに備えておくといいでしょう。
(5) 災害に備えた外出時の持ち物
 災害は、いつ、どこで起こるか判りません。外出時には、周りの環境がいつもと違うため、より一層の注意と周囲の人との協力や支援が必要です。
 このため、災害の状況を正確に知り、緊急連絡できるよう、外出時には、携帯電話、携帯ラジオ、緊急連絡用カード、携帯用ブザーや笛などを所持するようにします。
 また、自分が何のため、どこに外出したか家族に伝えておいたり、メモ書きなど、所在が判るようにしておきます。
(6) 家の安全対策 
 家の補強
 家の防災対策の第一は壊れない、頑丈なものとすることです。
 このため、建物の耐震診断を受けて、その結果により耐震補強をしたり、門柱やブロック塀等の耐震性もチェックし補強します。
 家の中の安全対策
(1)  家具・電化製品の固定(市販の固定器具を使って固定する。)
(2)  収納の工夫(重い物は下部に、軽い物を上部に入れ、扉を金具で固定する。)
(3)  ガラスの飛散防止対策(飛散防止フィルムを貼ったり、アクリル板に変える。)
(4)  家の中の整理整頓(出入り口を整理整頓し、棚上の物は落下防止をする。)
(5)  非常用品(いつも同じ所に置く。夜間でも見えるよう蛍光テープを貼る。)
(6)  消火器類(火災が発生しても持てるように、火元から少し離れた場所に置く。)
(7) 地域の防災対策を知る
 市町村が策定した防災計画などから、地域の防災対策がどうなっているかを知り、避難場所や避難経路を確認しておきます。その際、自宅から避難場所や広域避難場所 までの経路をチェックし、支障となる物がないか確認したり、主な目標物の目印や危険な場所等を地図に落としてオリジナルの防災地図を用意しておくと避難するときにあわてずにすみます。
(8) 家族で防災対策を考える
 災害時には、協力して被害を防いだり、救助したり、一緒に避難するなど家族の協力が大変に重要ですし、家族の安否を確認することも大事なことです。
 このため、災害がいつ発生してもよいように、家族で防災について話し合い、災害について学習したり、事前対策を考えておきます。その際、緊急時の連絡方法や役割分担、避難方法、離ればなれになった場合の待ち合わせ場所等を決めておくことが大切です。同時に、非常用品や備蓄も確認し、準備します。
 また、家族で地域の防災訓練に参加したり、季節ごとや違う時間帯などの災害発生 を想定してその状況に応じた避難経路、避難方法、集合場所を家族みんなで実際に確認してみる必要もあります。
(9) 友人・知人などと防災対策を考える
 同じ障害があったり、自分の障害をよく判ってくれている友人や知人などと防災について話し合う機会をもち、情報を交換したり、災害時に障害があるためにどういうことが起こるかを想定し、被害を最小限にしたり安全に避難できる行動などを考えて おきます。この際、緊急時の連絡方法を決めたり、支援を頼んでおくことも大切です。
(10) 障害者等関係団体で防災対策を考える
 障害のある人や高齢者でつくっている団体やグループなどで定期的に防災について話し合う機会をもち、情報を交換したり、災害時に障害などがあるために困難なことや危険なことなどを洗い出したり、災害時の行動や注意点、障害や生活状態に応じた特有の非常用品、団体やグループの役割について考えたり、確認しておくことが必要です。
 このような話し合いの中から、防災のための要望や提案を集約し、自分達で対策を を考えたり、地域に協力を求めたり、必要な場合には行政に伝えたりしましょう。
 また、そのような機会に、防災関係機関やボランティアグループなども交え、情報を提供してもらったり、災害や防災対策を学習することも大切です。
(11) 地域の防災訓練に参加する
 市町村または地域ごとに毎年、防災訓練が実施されます。広域避難場所や防災拠点に集合して各種の訓練が行われます。また、自治会単位などでも防災訓練が行われています。初期消火訓練などで実際に消火器の取いを経験しておくと緊急時にあわてないですみますし、被害を最小限にする行動や安全な避難方法なども体験できます。
 自分の身を自分で守るためにも、地域防災訓練には積極的に参加しましょう。防災訓練を通じて、自主防災組織や隣近所の人とのコミニュケーションも密になり、その経験は災害時の強い味方になります。
 しかしながら、防災訓練に参加しても障害があるために十分な訓練ができなかったり、情報を得にくいことや理解しにくいこともあります。このような時は、地域の人や自主防災組織、防災関係機関などに話し、障害のある人や高齢者への配慮や参加しやすい環境づくり、さらには参加している全員が効果的に訓練できるよう、ともに考えたり、実施してもらうようにします。