第1章 災害の知識
(1) 地震
 地震の発生する原因は、大きく二つに分けることができます。一つは関東大震災(1923年)や南海地震(1946年)など、日本の太平洋側で多く発生する「海溝型地震」で、プレートの境界で起こる地震で、日本列島の下に潜り込むプレート同士の境目に歪みのエネルギーがたまっていき、変形が限界に達したときに元に戻ろうとして急激に運動する際に発生します。もう一つは、「内陸型地震」でプレートの沈み込みにより内陸のプレートに蓄積された歪みのエネルギーによる変形から断層が生じたり、既存の断層が活動して地震が起こるもので、兵庫県南部地震(1995年)や鳥取県西部地震(2000年)など直下型地震の殆どがこのタイプです。
 滋賀県は、我が国でも有数の活断層の密集地に属し、わかっているだけでも20本以上の活断層があり、地震発生の可能性が全国的にみても極めて高い状況にあります。
 地震の大きさを表す単位として、地震のエネルギーの大きさを表すマグニチュード、各地域での地面の揺れの大きさ表す震度があります。マグニチュードが大きくても震 源が遠い場合や深い場合は震度が小さく、逆にマグニチュードが小さくても震度が近い場合や浅い場合は震度が大きくなります。最近の地震では、兵庫県南部地震がマグニチュード7.2で、兵庫県では震度7、彦根地方気象台では震度5を記録しました。
 地震を予知するために地震予知連絡会があり、滋賀県も全域が「特定観測地域」になっていますが、地震の予知は難しく、突然に発生する可能性が高い災害ですので、常日頃の事前対策が大切です。
 
(2) 火災
 火災原因として、近年は、放火や不審火が増えてきています。
 滋賀県では、都市化の急速な進展に伴い、一部の地域では住居の密集化が生じており、火災による大規模被害の危険性が増大しています。
 火災の発生時に大事なことは、初期消火ですが、「初期」とは火事が起こった時から約3分前後までのことで、壁やふすまなどの立ち上がり面に火がある状態までのことです。この間は消火器等で消火が可能ですが、火が天井へ届くようになると急速に燃え広がるため、消火活動は危険となります。
 建物火災の煙には、塩素系の化学物質が大量に含まれ、一酸化炭素も発生しているため、これらを吸い込むと窒息したり、筋肉や感覚が働かなくなり危険です。また、火災に伴い空気中の酸素が欠乏するため、意識を失う危険もありますので、煙が増えてきたら、身体を低くして脱出することが大切です。
 
(3) 風水害
 風水害は、春から夏にかけての梅雨前線による多量の降雨や、夏から秋にかけての台風による暴風雨や秋雨前線による降雨が原因となり、地形的に急勾配の河川が多いため、雨が短期間に流出することによる洪水などの水害が起こりやすくなります。
 さらに、山地や谷地、崖地などでは、地震や台風などの気象条件が重なると、地盤が水で緩み、土石流、地すべり、がけ崩れなどの土砂災害が発生しやすくなります。
 これらの土砂災害は、土砂の移動が強大なエネルギーを持つとともに、突発的に発生するため、被害が大きくなる場合が多くあえります。
 台風の強さは、ヘクトパスカル(hPa)という気圧の単位で表され数値が低い程強くな り、960hPa以上になると強いとされます。大きさは、風速25m/s以上の風が吹く暴 風域を半径(km)で表し、300km程度になると大型とされます。また、雨量は雨が流れず、しみ込まず、蒸発もせず残ったとした時の水の深さをミリメートル(mm)で表し、1時間で降った雨量(1時間雨量)が20mmを超えると被害の発生が予想されます。
 滋賀県の台風による暴風雨の特徴は、台風が本県の東を北東に進む場合(伊勢湾台風等)には暴風が、西を北東に進む場合(室戸台風等)は豪雨をもたらすことです。また、大部分の河川が琵琶湖に流入しているために延長が短く、河床が地域より高い天井川が多いため、豪雨等による堤防の決壊時などには大きな被害が予想されます。
 地質的には、大規模な山崩れが起こりやすい地域や豪雨の際には小規模な崩壊地をつくり、多量の土砂を流出する傾向がある地域もあるので、注意が必要です。
 これらの風水害のうち、台風は気象情報などにより影響が予見できますので、正しい情報の把握と理解が必要です。局地的な豪雨等は予見が難しいため、気象情報や降雨状況などを確認して、早めに避難や対策をすることが大切です。